HIV感染症は、現在日本では年間約1,500人が新規に診断されていますが、残念ながらHIV診断時に、その約1/3が「診断の遅れの象徴」とされるAIDS(Acquired Immunodeficiency Syndrome)を発症しています。抗ウイルス薬の進歩に伴い現代においてHIV患者は長期生存可能になっていることから、早期診断・早期治療が望ましい感染症のひとつです。よって、下記のような背景を持つ患者の場合には、HIVスクリーニング検査を施行して頂きたいと思います。当科には、岡秀昭教授を筆頭にHIV診療経験が豊富な医師が複数在籍しており、また将来的にHIV拠点病院化も目指しておりますので、積極的にHIV患者を御紹介ください。
HIVを想起すべき状況
①HIV感染症が疑われるとき
•日和見疾患/性感染症を現象・所見から疑う
– 結核、ニューモシスチス肺炎、クリプトコックス症、口腔カンジダ、帯状疱疹、悪性リンパ腫、etc.
– 梅毒、B/C型肝炎、赤痢アメーバ感染症、糞口感染する疾患(A型肝炎、細菌性赤痢)、
淋菌感染症、クラミジア感染症、陰部ヘルペス、
パピローマウイルス感染症(子宮頸癌・肛門癌・咽頭癌・尖圭コンジローマなど)、etc.
•日和見疾患/性感染症(上述)の既往がある
•リスクの高い性交渉歴がある
– 男性同性間性交渉を行う男性(MSM:Men who have sex with men)
– commercial sex worker
– パートナーがHIV陽性者
•急性HIV感染症を疑う
②HIV感染症の有無が予後/治療方針を変えるとき
•妊婦
– 母子感染を防ぐため
•血液曝露事故発生時
– 予防内服継続の要否を判断するため
•悪性腫瘍と診断された時
– HIV感染者では、リンパ腫以外にも様々な悪性腫瘍の頻度が増加
– 未治療のHIV感染症が背景にある場合には化学療法時の感染性合併症や骨髄抑制が高度化
– 悪性腫瘍の治療自体が成功したとしてもHIV感染症の見逃しがあれば長期予後を悪化させる
③なんとなくひっかかるとき
•「原因不明の」血球減少
•「原因不明の」体調不良(発熱・体重減少)
•「原因不明の」リンパ節腫大
•「原因不明の」皮膚症状(慢性掻痒、脂漏性皮膚炎、難治性口内炎、など)
•「原因不明の」検査値異常(白血球減少、血小板減少、高γ-グロブリン血症、高蛋白血症、肝機能障害、など