ご紹介について

当科は、開設当初は病院総合診療医として各専門医が当該領域の専門治療(手術や化学療法、免疫抑制治療、など)に集中できる体制をサポートするための「臨床感染症コンサルテーション」、耐性菌を作らないための「抗菌薬適正使用支援」、耐性菌を広げないための「感染制御対策」を当院感染症科・感染制御科と一緒に行って参りました。その後、感染症専門医を目指したいという志を持った若手医師達が入局し、スタッフが増えるにあたり、各専門診療科の間に埋没しやすい病態や感染症である、「不明熱」、「HIV(Human Immunodeficiency Virus)」、「STD(Sexually Transmitted Disease)」に対する外来・入院診療の充実を図って参りました。

古典的不明熱

古典的不明熱は、一般的には1961年にPertersdorfらが定義した不明熱(FUO: Fever of Unknown Origin)の状態を指すことが多く、具体的には38.3℃以上の発熱が3週間以上続き、1週間以上の精査でも原因がわからない状態をいいます。38.3℃以上という明らかな発熱の場合、外因性発熱物質(細菌自体やその毒素など)やサイトカインを介した炎症による病的な発熱が多く、習慣性高体温など生理的なものが少なくなります。また、3週間の間に多くの急性発熱性疾患は症状が顕在化して診断され、ウイルス感染など自然軽快するものは除外されていきます。そのため古典的不明熱の原因は、下表のように数日では改善も悪化もせず、症状や一般的な外来検査では診断がつきにくい疾患が多く含まれるようになります。このような状態になると、詳細な病歴聴取や身体診察に加え、画像検査や生検などの侵襲的な検査を組み合わせた系統的な戦略が必要になるため、忙しい外来診療の合間で対応することが難しくなってきます。当科では若手医師に基本的な外来診療を指導するというソフト面と、設備と各専門診療科の揃った大学病院というハード面を活かし、古典的不明熱診療を積極的に行っています。上記定義を完全に満たさなくても、バイタルは安定しているものの明らかな発熱や炎症が一週間以上続いている場合など、古典的不明熱の前段階でのご紹介もお受けしております。

高頻度中頻度低頻度
感染症伝染性単核球症
膿瘍性疾患
(肺,腎,腹腔内,骨盤内など)
化膿性椎体炎
感染性心内膜炎
肺外結核
HIV感染症
ウイルス性肝炎
リケッチア症
レプトスピラ症
輸入感染症 (腸チフス、マラリアなど)
悪性腫瘍悪性リンパ腫白血病
腎細胞癌
肝細胞癌
転移性肝癌
脳腫瘍
膵臓がん
心房粘液腫
膠原病菊池病
成人スチル病
リウマチ性多発筋痛症
SLE
高齢発症関節リウマチ
高安動脈炎
巨細胞性動脈炎
顕微鏡的多発血管炎
サルコイドーシス
多発血管炎性肉芽腫症
結節性多発動脈炎
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
その他薬剤熱亜急性甲状腺炎
クローン病
潰瘍性大腸炎
深部静脈血栓症
自己炎症性症候群
(家族性地中海熱など)
表:古典的不明熱の例
性感染症

性感染症に関しては生殖器に病変がある場合に想起するべき疾患と生殖器以外に病変を生じる場合に想起する疾患に分けて理解することが大切です(下記)。患者が生殖器の症状を訴えた場合にはSTDを想起することは難しくないと思いますが、咽頭痛、腹痛(右季肋部痛、下腹部痛)、腹部不快感(慢性期骨盤内炎症症候群を想起)、テネスムス、下痢、肛門痛、多発関節痛・関節炎、粘膜・皮膚症状、リンパ節腫脹、肝炎・肝機能異常、伝染性単核症様症状、不明熱、無菌性髄膜炎、不妊・異常妊娠などの生殖器以外の症状や所見を認めた場合にもSTDを想起することができれば見逃しが少なくなります。上記、症状や所見を認める患者がいれば、検査および当院への相談紹介を御検討ください。

生殖器に病変を生じる疾患生殖器以外に病変を生じる疾患
梅毒
淋菌
ヘルペス
伝染性軟属腫
疥癬
クラミジア(鼠径リンパ肉芽腫症を含む)
トリコモナス
ヒトパピローマウイルス
軟性下疳
鼠径肉芽腫(Klebsiella granulomatisによる)
など
梅毒
淋菌
HIV
肝炎ウイルス(HAV、HBV、HCV)
赤痢アメーバ
ジアルジア
など
表:性感染症を想起する状況と鑑別診断
HIV

HIV感染症は、現在日本では年間約1,500人が新規に診断されていますが、残念ながらHIV診断時に、その約1/3が「診断の遅れの象徴」とされるAIDS(Acquired Immunodeficiency Syndrome)を発症しています。抗ウイルス薬の進歩に伴い現代においてHIV患者は長期生存可能になっていることから、早期診断・早期治療が望ましい感染症のひとつです。よって、下記のような背景を持つ患者の場合には、HIVスクリーニング検査を施行して頂きたいと思います。当科には、岡秀昭教授を筆頭にHIV診療経験が豊富な医師が複数在籍しており、また将来的にHIV拠点病院化も目指しておりますので、積極的にHIV患者を御紹介ください。

HIVを想起すべき状況

 ①HIV感染症が疑われるとき
  •日和見疾患/性感染症を現象・所見から疑う
       – 結核、ニューモシスチス肺炎、クリプトコックス症、口腔カンジダ、帯状疱疹、悪性リンパ腫、etc.
    – 梅毒、B/C型肝炎、赤痢アメーバ感染症、糞口感染する疾患(A型肝炎、細菌性赤痢)、
    淋菌感染症、クラミジア感染症、陰部ヘルペス、
    パピローマウイルス感染症(子宮頸癌・肛門癌・咽頭癌・尖圭コンジローマなど)、etc.
  •日和見疾患/性感染症(上述)の既往がある
  •リスクの高い性交渉歴がある
       – 男性同性間性交渉を行う男性(MSM:Men who have sex with men)
       – commercial sex worker
    – パートナーがHIV陽性者
  •急性HIV感染症を疑う

 ②HIV感染症の有無が予後/治療方針を変えるとき
  •妊婦
      – 母子感染を防ぐため
  •血液曝露事故発生時
     – 予防内服継続の要否を判断するため
  •悪性腫瘍と診断された時
       – HIV感染者では、リンパ腫以外にも様々な悪性腫瘍の頻度が増加
       – 未治療のHIV感染症が背景にある場合には化学療法時の感染性合併症や骨髄抑制が高度化
       – 悪性腫瘍の治療自体が成功したとしてもHIV感染症の見逃しがあれば長期予後を悪化させる

 ③なんとなくひっかかるとき
  •「原因不明の」血球減少
  •「原因不明の」体調不良(発熱・体重減少)
  •「原因不明の」リンパ節腫大
  •「原因不明の」皮膚症状(慢性掻痒、脂漏性皮膚炎、難治性口内炎、など)
  •「原因不明の」検査値異常(白血球減少、血小板減少、高γ-グロブリン血症、高蛋白血症、肝機能障害、など

輸入感染症

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抗酸菌症

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